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「チェルノブイリ診療記」(菅谷昭)を読んでいます

90年代半ばからチェルノブイリでの子供たちの甲状腺医療に携わる医師で、現在松本市長でもある菅谷昭さんの本の新版です。

のっけから、胸にぐっとくることが書いてあります。

++++引用ここから++++

「もっと生きたい」―そう願う子供たちが、目の前で死んでいかざるを得なかった。そして親たちは、「あの時、外であそばなせなければ…」「あそこで、キノコを食べさせなければ…」と深く後悔し、一生、自らを責め続ける。

++++引用ここまで++++

関東に住む自分の実感として、最近、いまだ原発災害被災地であるはずの関東でも、大人たちの放射能に対する感覚が薄らぎすぎているように思います。これは、

 

「危険を回避するライフスタイルが身に付いた」

ということではありません。社会のインフラや仕組みは、いまだに放射能汚染から市民を守る仕組みには、これっぽっちもなっていないのです。

ベラルーシのように、各小学校に食品の汚染を測る機材とスタッフがいて、家庭で被ばく量を管理できるような仕組みがありますか?すべての子供たちが定期的に無料で被ばく量検査を受け、治療を受けられるような仕組みがありますか?このような仕組みがあってもなお、低線量被ばく状況になったチェルノブイリ被災地では、放射能が原因とみられる出産異常や健康被害が出続けているのです。

放射能には色も、味も、においもなく、特殊な機械を通じないとその脅威を目の当たりにすることはできない。
そして、急性症状を起こすほどの被ばくをしていないから、その健康被害を実感することができない。
だからこそ、なんか「別に影響ないよね」とか「たいした影響はないよ」などと感覚を持って「普通に生活できるのじゃないかな」なんて思い込みをしてしまう。

しかし、事故後、放射性ヨウ素こそなくなったとみられるものの、セシウムなどについては「全然減っていない」むしろ、毎時二億ベクレルの汚染物質はまだ原発から放出されているのです。

自分は特に、子供たちを育てる親の間の「放射能慣れ」について危惧しています。

神経質と言われても、社会が子供を守ることをしない限り、子供は親が守るしかない。ときに社会と戦うことだってしないといけない。
子供には、親しかいないのだから。
親は自治体がいうことをうのみにせず、周囲の雰囲気に流されずに自ら学び、情報を集め、判断し行動することが求められています。

先に引用した菅谷先生の本のように―菅谷先生の本では、チェルノブイリ事故5年後に甲状腺異常は目立つようになり、10年後にピークを迎えた※、とある―「あの時こうしていれば」という状況では、いろいろなものが手遅れになるのです。壊れるのは子供の健康や人生だけではありません。家庭の未来も、親の人生も、家の家計も、ライフスタイルも同様にくるってくるのです。
目に見えた被害が出てくるのはまだこれからなのです。

※菅谷先生の本によると、ベラルーシで国立甲状腺ガンセンターの権威、デミチク教授の当時の発表によると、ベラルーシにおける子供たちの甲状腺がん患者数は
・チェルノブイリ事故以前の10年間と事故後10年間を比較したとき、約60倍に増加している。
・事故後に生まれた子供の症例よりも、事故前に生まれていた子供たちの症例が非常に多い
・IAEAは事故直後から原発事故と甲状腺異常の関係を認めてこず、それに対する医療現場からの批判を無視していたが、その後、症例の増加に合わせてそれを認めざるをえなかった※
ということであった

※ちなみに、IAEAのチェルノブイリ事故調査委員会委員長は広島の医学者、放射線影響研究所の理事長も務めた日本人の重松氏で、事故後の委員会の現地調査の手法には批判と疑問の目が向けられたのは、ジャーナリストの広河隆一氏などが報告している。つまり、原子力産業保護のために原発事故の被害を低く見せることをした、と。

+++

松本市は、菅谷さんが市長でもあることもあり、いち早く、学校給食などの安全食材確保、子供たちを守る取り組みを始めています。そのため、松本に移住する東日本の家族もいます。
本当は、社会全体で危機感を保ちながら、これから果てしなく続く放射能汚染と付き合う仕組みを遅滞なく速やかに作っていかねばならないこの時期に、いまだに多くの地域では、親が踏ん張って孤立しながら子供たちを守らなければならないこの状況が続いていることに、日本社会への危惧を覚えます。


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2011年09月10日 08:13に投稿されたエントリーのページです。

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