チェルノブイリ事故発生直後、事故で重傷を負った患者への骨髄移植の支援で米国からソ連への支援を行ったゲイル医師の著書「チェルノブイリ アメリカ人医師の体験 岩波現代文庫」より、大気圏核実験禁止を求めるケネディ大統領の言葉。
「骨ガンにかかり、白血病に侵され、あるいは肺が毒で浸潤している子供や孫の数値だけを問題にし、統計上のことだと一蹴してしまってはならない。われわれがこの世を去ってずいぶん経ったあと、たった一人の人が生命を失うとしても、あるいはたった一人の奇形児が出生するとしても、そのことはわれわれみんなが今日憂慮しなくてはならないことである…われわれは、みなこの小さい惑星に住んでいる。われわれはみな同じ空気を吸っている…そして、われわれはみな不滅ではない」
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「今日憂慮しなくてはならない」…その言葉は本当に説得力があります。
こうやって見ると、人間が制御することができない放射能汚染という観点でみれば、核兵器も原発事故も、まったく似ているものであり、原発は兵器よりももっとたくさんの汚染物質を拡散するという意味では、なおさらたちが悪いものであるな、と感じます。
ゲイル医師のこの手記は、チェルノブイリ事故発生直後の中枢に近い場所での治療体験でもあり、物事がどのように推移して行ったかが分かります。
日本のジャーナリストのかたや、医師ではなく、アメリカという原発や核兵器を持つ国家の医師がどう見たのか、という観点からも、医師という観点からの専門的な部分も、とても興味深く読めました。
そして、当時から、急性症状の次に長期にわたる対応が必要になり、その取り組みを始めていることを見ると、いま、日本で長期低線量被ばくへの対応が不可避であることがよくわかります。