映画で「太平洋の奇跡」が今日から上映されている。
その内容が、第二次大戦中の激戦地サイパンでの実話をもとにしているというから、
昔から軍記物をたくさん読んでいる血が騒いで、先日取り寄せた。
サイパンにて圧倒的物量差による米軍との大規模組織的な戦闘が終わったのちも、
一士官である大場大尉は僅か縦横それぞれ5から6km程度の範囲にとどまった。
サイパンは、狭い島である。そこに、米軍の大群がおしよせていた。
その中で、彼は終戦後の昭和20年12月に山を降り、米軍との戦争を終結させるために実に
一年以上を米軍の幾度とない掃討の目をかいくぐり多い時には300人の人間を率いていた。
その範囲で、1mおきに兵隊を配置した米軍の掃討作戦をいかにしのいだか?
非常にハラハラする展開や、アウトローのやくざの兵隊の生きざまなど、いくつもの背景が
含まれている。
その300人の中には、兵隊の数をはるかにしのぐ民間人が含まれていて、
その多くは大場大尉と兵隊よりも先に、大場大尉の判断によって安全に米軍に保護される。
本には、大場隊47名が当時マリアナ方面でおそらく最高位将官であったろう天羽少将の
命令のもとに、米軍に投降する写真が掲載されている。
背筋をピンと伸ばし、整列した将兵たちは実に堂々としている。
彼らが、いかに組織として最後まで一体感を保っていたのか、分かる気がする。
本を読むと、大場大尉が決して迷いなく適切な判断や命令を下していたのではない
ことが分かる。
それでも、彼の
「国のために戦っている理念」
「兵隊という資源を自決で失うのではなく、生きながらえて一人でも多く相手を倒す方針」
の明確さは、彼自身と、組織をブレさせていない。ほかにも、彼の行動の様々なところから
リーダーとしてのお手本のようなことが読み取れるのだ。
米軍からも称賛された大場隊の姿に、現代とこれからの日本を思った。
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いま、世の中は第二次大戦、太平洋戦争という悲惨な戦争の記憶が急速に薄れ、
同時に湾岸戦争以後、テレビでよくお目にかかるようになったゲーム感覚の戦争が
戦争というものへの感覚を麻痺させているように思う。戦争を否定することが最近では
「現実を知らない」などと馬鹿にされ、戦争が肯定される風潮も以前より大きくなっていると危惧している。
私は戦争は嫌いだし、起こしてもいけない、加担してもいけないと考え、
じゃあ、そのために身近でできることを考えながら生活することが重要だと考えている。
それは、自分の子孫や友人が戦場に立ってほしくないこと、
そして、その時の敵対する相手にも同様にそうやって考える人間の心があるからだ。
それでも、かつておこってしまった戦争で、この手記の中にあるように、多くの人が
家族や国を思いながら、自分の死がその繁栄に少しでもつながるのだという希望を
見出しながら斃れていったことは私は否定できない。
彼らと同じように私も家族や国のことを思い、そして、戦争がない世界をビジョンに
掲げながら、これからも生きていこうと思う。