原発事故による低線量(放射線量が通常より高いものの即時的に影響を及ぼさない)での長期間被曝については、まだ、正確なことが分からないのが現状です。
私が自分自身で採用しているLNT仮説というのは、いわゆる「確率的影響」というもので
「少しでも被曝すればそれだけ癌死のリスクが高まる」
という考え方ですが、これも、現在検証の途上にあります。
対極的な考え方が「ホルミシス効果」という考え方です。
これは、むしろ、「低線量長期被曝」は、温泉の湯治のように体に良い影響をもたらすのではないか、という考え方です。
マウスを使った実験では、105匹のマウスに対して3つの線量で35日間の照射では、確かに癌の発生確率の低下がみられています。
(http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/detail/G03007.html)
一方では、別の団体の実験では400日間の照射においては寿命の低下が4000匹のマウスによって明らかにされているのです。
(http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=09-02-08-09)
なお、人間には、放射線からの障害に対して修復能力があります。
ですから、ある程度の低線量被ばくには修復能力が追い付けば、問題がないわけです。
これらの考え方の図解は「これが現実」というサイトさんにわかりやすい図がありますのでリンクします。
http://genjitsu.jp/wp-content/uploads/Degree_of_risk_1.jpg
放射線障害に対する修復能力の程度はわかりません。子供が大人の4倍の被害を受けやすい、というのは、原発推進派、反対派も認めるところであることと、
累積で「50mSv」を超えてくるとがんのリスクや健康への影響が出てくるということについてはほぼ検証されている、ということは言えるでしょう。(しきい値)
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さて、この事を今の日本に置き換えてみます。
東日本、および、食品が流通している西日本も関係するかもしれません。
私の住む地域も含め、広範囲で11月以降、それまで収まりつつあった空間線量がそれまでより高い状況で推移しています。
これは、私は自宅近辺の定点観測からも、乾燥の季節に入り、地上に落ちた放射性汚染物質、セシウムなどが空中に最浮遊して風向きや降水によって降下し、あちらこちらを再汚染している(汚染範囲を広げている)と考えています。
除染が一切行われない中でのそのような状況はつまり、今後、私たちだけではなく、私たちのまだ幼い子供が将来子供を持っても、その子供の一生もまた低線量長期被曝のリスクと風向きにおびえていかないといけない現実を表しています。
また、4月から食品の汚染基準値が暫定基準値よりもだいぶ引き下げられて施行されます。
これは、十分なのでしょうか?
いえ、これは「生涯、飲食物のみからの被曝を100mSvに抑える」という考え方である時点で、十分な基準とは言えません。
なぜならば、人は汚染地域では飲食物からだけではなく、皮膚、呼吸、怪我した場所などからも、絶えず自然放射線以外からの被曝をしているからです。累積での100mSvはゆうに超えてしまうのです。
そうすると、明らかに癌(死)のリスクというのは上がってくることは国際的に認められるところです。
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では、私たちは低線量長期被曝に対して、どのようなスタンスをとるべきでしょうか?
本当に、危険かどうかわからない。
危険という説もある。でも、検証中。
危険ではないという説もある。でも、検証中。
このときに「危機管理」の考え方が重要になってくるのです。
その考え方の一つに、何度か取り上げた「プロアクティブの原則」があるわけです。
1、疑わしき時は行動せよ
2、最悪事態を想定せよ
3、「空振り」は許される。「見逃し」は許されない
これは、まさしく今の状況に適切な考え方だと私は考えています。
・ここまでやってきたけど、結果的に大丈夫だったね
ということと
・あの時、ああしておけばよかった
ということでは、結果は全く違うわけです。
だから、私は「少しでも被曝量が増えれば、その分リスクは増加する」LNT仮説をとることを選んでいますし、今の社会にもそれが必要だと考えています。
いずれにせよ、ベラルーシではチェルノブイリ事故10年後に小児甲状腺がんがピークを迎え、その後、いまでも低線量長期被曝によると見られる大人達の癌や白血病が増加または多く出ている事実があるのです。
この問題は、事故から25年間たったチェルノブイリの影響を参考にするほか、今はないでしょう。